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仕事の合間に

# 仕事の合間に

桜の花びらが舞い落ちる季節、都心のオフィスビルは忙しさに包まれていた。西野は社内の誰よりも早く出社し、パソコンの前に座っていた。その目の前には、部下の佐藤がいる。佐藤はいつも真面目で、一生懸命な姿勢が社内でも評価されており、その無邪気な笑顔に西野は心を奪われていた。

「おはようございます、課長!」佐藤が元気に挨拶する。

「おはよう、佐藤。今日はクライアントのプレゼンがあるから、準備は整ってるか?」西野は眼鏡をかけたまま、デスク上の資料を整理しながら応じた。

「はい、もう完璧に準備できています!」佐藤は力強く胸を張る。その目がキラキラと輝いていて、その様子に西野の心の中に小さな温かな感情が芽生える。

「そうか、それなら安心だ。」西野は微笑みを浮かべながら言った。しかし、心の中では、彼が単に部下としての能力だけでなく、もっと深い感情を抱いていることを自覚していた。

午前のプレゼンは順調に進み、クライアントの反応も良好だった。休憩室に戻り、コーヒーを入れながら、二人は並んで座った。のんびりとした雰囲気の中で、会話が弾む。

「課長、休日は何をしているんですか?」佐藤が好奇心に満ちて尋ねる。

「特にこれと言った趣味はないけれど、美味しいものを食べるのが好きだな。君は?」西野は無邪気にはにかむ佐藤の笑顔を見つめた。

「私は最近料理を始めました!今度、課長に食べてもらいたいです!」その言葉に、西野は少し驚くと同時に、どこか嬉しい気持ちが広がった。

「ぜひ、食べてみたいな。」西野は思わず心からの承諾を返した。

その日は、仕事の合間に少しずつ心の距離が縮まっていることを感じながら過ぎていった。夜が訪れ、仕事を終えた二人はオフィスを後にする。桜が舞う道を歩きながら、ふとした瞬間、佐藤が見上げた。

「課長、桜が綺麗ですね。」

「そうだな。」西野は彼を見下ろすと、彼の目に映る桜の美しさと同時に、自分の中の不思議な感情を感じた。「君もとても綺麗だよ。」

佐藤は頬を紅く染め、照れ笑いを浮かべる。その瞬間、二人の心の距離は、まるで桜の花びらのように、ふわふわと優しく近づいていった。

酒を酌み交わしながら、緊張が和らぎ会話が弾む。お互いの素直な気持ちがゆっくりと溢れ出し、初めてのデートの雰囲気が漂った。

「こうして二人でいる時間、すごく楽しいです。」佐藤が両手を組んで言った。

「僕もだよ。仕事のことを忘れて、こんな風に過ごせるのは貴重な時間だ。」

しばしの沈黙が訪れたが、その間もさまざまな思いが交錯する。西野はその瞬間、彼の手を取った。柔らかな触れ合いに、佐藤は驚くように目を見開いた。

「これからも、こうして一緒に過ごせたら嬉しいな。」西野の言葉が少し震えた。一瞬の静寂の後、佐藤は微笑みながら答える。

「私もです。課長といると本当に心が温まります。」

その日から、二人は仕事以外でも連絡を取り合うようになった。時にはランチを共にし、時には桜の名所でのピクニックを楽しむ。少しずつお互いのことを理解し、支え合う関係が深まっていった。

数ヶ月が経ち、春が終わりを迎えた頃、佐藤は西野に一つの提案をする。「課長、私たちの関係を少し公にしてもいいですか?二人の時間がもっと自由になったらいいなと思って。」

西野は少し驚いたが、彼の思いを受け入れるように頷いた。「それもいいかもしれないね。君をもっと多くの人に知ってもらいたいし、僕たちの関係を大切にできればと思う。」

その言葉がきっかけで、二人の絆はさらに深くなっていく。ほんの少しの勇気があったからこそ、彼らの関係はより色鮮やかになった。そして、日々の仕事を通じて、彼らの心もより一層充実していった。

季節が移り変わる中で、二人の心にはいつも温かな桜の思い出が残り続け、また新しい日々を迎える準備をしていた。

いつかまた、桜の舞う季節に二人で同じ道を歩くことを約束しながら、西野は佐藤の横顔を優しく見つめていた。さあ、これからどんな未来が待っているのだろうかと、心の中でわくわくする一瞬を楽しみにしていた。