# 秘密の同居生活
春の柔らかな光が差し込むキャンパス。新学期を迎えたばかりのある日、後輩の佐藤は先輩の池田に密かに憧れていた。池田は優しく、時折見せる真剣な表情が、佐藤の心を掴んで離さない。
「佐藤、まだ部室にいるのか?」
部活の後、二人きりになった瞬間、池田が声をかけた。佐藤は頬が熱くなるのを感じ、一瞬心の中で叫んだ。
「そんな声で呼ばれたらドキドキしちゃうって!」
「え? 何か言った?」
「い、いえ、何でもないです!」
声が裏返ってしまい、慌てて目を逸らす。だが、その瞬間、池田の表情が少し和らいだのを見逃さなかった。
「そうだ、今度、俺の家に来ないか?」
池田の提案に、佐藤は心臓が跳ね上がった。この瞬間が夢であればいいのにと思いつつ、思わず頷いてしまった。
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数日後、火曜日の夕方、佐藤は池田の家の前に立っていた。心臓がドキドキして止まらない。自分の鼓動が大きなスピーカーから流れ出ているように感じた。
「お待たせ、佐藤。どうぞ入って。」
池田がドアを開けると、中はシンプルで清潔感があふれていた。そこで待っていたのは、池田の愛犬、ポメラニアンのココ。
「ココ、佐藤を歓迎してあげて!」
池田の言葉に、ココは喜んで尻尾を振りながら佐藤に駆け寄った。思わず笑いながらココを撫でる。
「くすぐったいな、ココ。」
「ココ、嬉しそうだね。」
「池田先輩の家、居心地良さそうですね。」
「お前もそう思ってくれれば嬉しいな。」
少し照れくさそうに微笑む池田が、いつもより一層魅力的に見えた。二人でリビングに座り、しばらくのんびりとした時間を過ごす。
「先輩、ここに住むのは楽しいですか?」
「うん、でも一人だと寂しいから。お前が来てくれて良かった。」
その言葉に、佐藤は思わず頬を赤らめる。
「私も、先輩と一緒で楽しいです。」
しばらくの沈黙の後、池田がふと話題を変えた。
「そういえば、最近サッカーの調子はどうなんだ?」
「まあまあです! あ、でも先輩と一緒に練習できたらもっと良くなると思います!」
「俺ももっとお前と練習したいな。」
その言葉に、佐藤の心は高鳴った。池田が自分のことを考えてくれている。そんな瞬間、二人の距離が少し近づいたように感じた。
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日が経つにつれ、二人の関係はどんどん深まっていった。秘密の同居生活は周囲に気づかれないように気を遣いながらも、時折の小さな幸せをもたらしていた。たとえば、夜中にお菓子を食べながら映画を観たり、一緒にバスケをしたり。
「池田先輩、次は私の家でも同じことしませんか?」
「いいな、それ! じゃあ今度は、佐藤の好きなアニメでも見ようか。」
その時、ふとした拍子に指が触れ合い、互いの心臓がドキリと跳ねた。池田は驚いた様子で目を丸くするが、すぐに笑顔を取り戻した。
「どうしようか、これから。」
「はい? 何か考えているのですか?」
「実は、お前に伝えたいことがある。」
佐藤の心が不安でいっぱいになる。何を言われるのだろう。思わず身を引いてしまった。
「先輩、何か、怖いこと言うんですか?」
「いや、そんなことはないよ。ただ…」
池田が一瞬言葉を詰まらせた瞬間、部屋の静けさが重たく感じた。そこで、佐藤は思い切って口を開く。
「私も、先輩のことが好きです。」
その言葉に池田は驚いた顔をし、そして優しい笑みを浮かべた。
「俺もだよ、佐藤。」
その瞬間、二人の心が通じ合った気がした。先輩と後輩という肩書きが、ただの絆になった。胸が温かくなるのを感じた。
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時が経ち、二人は秘密の同居生活を続けていた。もちろん周囲にはバレないように気を遣いながら。しかし、心はいつでも繋がっていることを感じていた。
「先輩、次の休みはどこかに行きませんか?」
「いいね、どこに行きたい?」
池田の笑顔が眩しい。
「なんでもいいです、先輩と一緒なら。」
その言葉に、池田の目がキラリと光った。二人の未来はまだ何も決まっていないが、気持ちを共にすることで、どんな場所でも楽しいはずだと確信している。
どこまでも続く青春の中で、二人の秘密はいつまでも輝き続ける。どんな時でも、一緒にいることが一番の宝物だった。彼らの物語は、これからも続いていく。
春の風が穏やかに二人を包むように、彼らの関係も少しずつ甘く、静かに深まっていくのだった。