小説

秘密の同居

# 秘密の同居

春の風が心地よい午後、桜咲学園の校舎は色とりどりの花びらに飾られていた。後輩の匠は、ドキドキしながら先輩の家の前に立っている。先輩の優斗とは同じ部活に所属しているが、最近は彼のことが気になって仕方がない。そんな矢先、家の事情で一時的に住まわせてほしいと頼まれたのだ。

「本当にいいのかな、こんなことお願いしちゃって…」

自分の心の声を抑えながら、匠は勇気を振り絞り、インターホンを押した。数秒後、優斗がドアを開ける。

「おお、匠!待ってたよ」

優斗は誇らしげに微笑み、その白く整った顔立ちとふわっとした髪が彼の魅力を引き立てている。匠はその姿に胸が高鳴るのを抑えられなかった。

「これ、荷物。全部持ってきたから」

そう言って匠は、自分のリュックを背負い直す。すると、優斗は手を差し出してリュックを受け取り、無造作に肩にかけた。

「それじゃあ、上がってください」

匠は少し緊張しながら、優斗の後に続く。狭い玄関を抜けると、優斗の部屋は思ったよりもシンプルで無駄がない。

「元々は一人暮らしだから、そんなに広くはないんだけどね」

「全然大丈夫だよ」

内心、優斗の部屋で過ごせることが嬉しい匠は、心を落ち着けるために深呼吸をする。

その夜、二人で勉強をしながら、少しずつ打ち解けていく。匠が数学の問題を解いていると、偶然にも優斗の手が触れてしまった。

「ごめん、近かったかな」

「大丈夫。気にしないで」

二人の目が合い、一瞬、その瞬間が静止した。匠は焦りを隠せず、目をそらす。

「匠、目がキラキラしてるね。何か遊びたいことがあるの?」

優斗は優しい笑顔で訊ねた。匠は思わず赤面するが、心の中では戸惑いを感じていた。

「遊びなんて…恥ずかしいよ、先輩」

「こういうのは大事だよ。たまには息抜きも必要だし」

「そう言われると、ちょっとだけど…」

優斗の言葉に、匠の気持ちは少しほぐれた。こうして、二人の距離はどんどん縮まっていった。

次の日、匠は「逆に先輩こそ遊び心があっていいと思いますよ」とフィードバックしながら、ふと優斗を見つめた。優斗の笑顔には何か特別なものを感じ、胸が高鳴る。

「こういう時間が続くと、いいなって思っちゃうな」

自分の言葉に驚いた匠だが、優斗は優しい目で返してくれた。

「ああ、確かに。なんか、いい感じになってる気がする」

それから数日が過ぎ、匠と優斗は帰り道に寄り道をすることが日常となっていた。周囲の視線が気になることもあったが、お互いに少しずつ心を開いていく。

ある日の夕暮れ、二人は公園のベンチに座り、さわやかな風を感じていた。匠は笑いながら、優斗に話しかける。

「先輩って、結構面白いね。もっと硬い人だと思ってた」

「もっと酷なこと言うと思ってたかも」

穏やかな空気の中で、匠は思わず微笑む。すると、突然の風が桜の花びらを舞わせ、二人を包み込んだ。

「これって、まさにロマンチックだね」

「ロマンチックなのか、これは…?」

優斗は驚いたようにはにかみ、匠はドキリと心臓が高鳴る。

「本当にこのまま、ずっと一緒にいたいって思っちゃうんだな」

その言葉に、優斗はしばらく無言だったが、やがてニッコリと微笑んだ。

「私も、そう思ってるよ。思ってもらえるなんて、嬉しいな」

互いの視線が絡む。匠は思わず顔を赤く染めた。

「でも、先輩、私にはまだいろいろと準備が…」

「大丈夫、匠。無理はしないで、お互い少しずつ進もう」

それから、二人は友情から恋へと一歩ずつ進んでいった。微妙な距離感の中で、優斗の瞳は匠を優しく見守っている。

「これからどうなっていくのかな」

匠は心の中で思いを巡らせる。その瞬間、優斗が隣に寄り添って笑う。

「いつか、二人で新しい場所に行こうよ」

その言葉に、匠はわずかな胸の高鳴りを感じた。先輩と後輩としての関係を超え、新しい何かが築かれていく予感がした。

二人の関係は、まるで桜が春の風に舞い散るように、不確かな要素を持ちながらも、その美しさを享受していた。

匠は心の中で思った。これからの彼らの物語が、確かに始まりの合図であることを。