# 秘密の同居生活
涼介はいつも通り、仕事前にオフィスのミーティングルームでパソコンを立ち上げていた。隣には、彼が入社して以来ずっと面倒を見てくれた頼れる先輩、翔太が腰をかけている。
「おはよう、涼介。今日も早いな」と翔太が穏やかな声をかけてきた。
「おはようございます、翔太先輩。今日は少し早めに出勤しました」と涼介は頬を赤らめながら答える。彼の心には、翔太と過ごす秘密の時間が温かく広がっていた。
実は二人は、秘密の同居生活を送っている。翔太が急に引っ越すことになり、空いていた涼介の部屋を選んだのだが、この軽い気持ちの決断が思わぬ展開を迎えることになるとは、誰も予想していなかった。
仕事が始まり、二人は忙しく過ごした。お昼休み、涼介は食堂で翔太の隣に座り、彼のお弁当を羨ましげに見つめる。「先輩の弁当、いつも美味しそうですね」と思わずつぶやいてしまった。
「これも手抜きなんだよ。お前の方がまだマシだろ」と翔太は笑いながら答える。その言葉に涼介は少し安堵し、翔太の気遣いに心が温かくなる。
「今度、料理を教えてくださいよ」と涼介が言うと、翔太は目を丸くして反応した。「ああ、俺が教えるのか? 嬉しいな、でも…本当に教えられるか?」
「大丈夫です! 翔太先輩なら、何でもできると思います」と涼介が笑顔で返すと、翔太は少し照れくさそうに目を逸らした。
仕事を終え、帰り道を並んで歩く二人。涼介の心には、先輩に対する特別な感情が芽生え始めていた。それを自覚するたび、どこかドキドキしてしまう。
「なあ、涼介」と翔太が声をかけた。「休日にどこか出かけるか?」
「え? いいんですか?」涼介は驚いた様子で尋ねる。
「もちろん。いつも一緒にいるし、たまには遊びに行こう」と翔太は笑顔を返す。涼介の心は高鳴り、思わず笑みがこぼれた。
「じゃあ、ぜひ行きましょう!」涼介は期待に胸を膨らませ、顔が少し赤くなった。
休日、二人は近くの公園へ行くことになった。暖かな日差しが心地よく、風に揺れる木々の音が二人の会話に溶け込む。
「子供の頃、ここでよく遊んでたんです」と涼介は懐かしそうに語り始める。
「へえ、普段真面目な涼介にも遊び心があったんだな」と翔太は笑う。その笑顔は、涼介の心に優しい響きをもたらした。
お互いの過去の話をしながら、いつの間にか足を止め、向かい合った。翔太の目には、いつもとは違う柔らかな光が宿っていた。
「涼介、実は…」翔太が言いかけたその瞬間、涼介の心臓が高鳴る。何か特別な言葉が飛び出すのではないかと、期待と不安が交錯した。
「実は、涼介とこうして一緒にいるの、本当に楽しいんだ」と翔太が続ける。涼介はその言葉に胸が熱くなる。
「私もです」と涼介は思わず口にした。二人の距離が近づく中で、目が合い、何かが通じ合う感覚を得た。
夕方、帰り道で涼介は心の中で自分の気持ちを整理していた。この感情が友達から一歩踏み出したものなのか、ただの気まぐれなのか。悩む彼をよそに、翔太は自然体で話を続けている。
「帰ったら、映画でも見ようか」と翔太が提案する。「涼介の好きなやつ、あるよな?」
「もちろんです! 先輩も楽しむと思います」と涼介は微笑む。二人の心が少しずつ近づいていく感覚が、彼の中で温かい気持ちを呼び起こす。
その晩、リビングで映画を観ていると、翔太が涼介の隣に寄り添ってきた。涼介はドキッとして頬が赤くなる。
「なんだよ、そんなに緊張するな」と翔太が笑う。涼介は言葉にはできない気持ちを抱えながら、ただ無言で頷いた。
映画が終わった後、涼介はソファの隣にいる翔太をちらりと見た。その瞬間、自分の気持ちを伝えたい衝動に駆られるが、それができるのか自信がなかった。
「涼介、なんでそんなに隣にいる俺を気にしてる?」翔太が口を開いた。
「え、あ…」涼介は一瞬言葉に詰まる。「あの、先輩と一緒にいるのが、なんだか特別なんです。」
翔太はその言葉に微笑み、涼介の目をじっと見つめる。二人の間に流れる静かな空気が、彼の心をさらに混乱させるが、同時にそれは心地よさでもあった。
「特別か。いい響きだな」と翔太が言う。彼の声には優しさが滲んでいる。
「先輩といると、本当に楽しいです。だから…」涼介の言葉は続かなかった。翔太への感情が確かに育っているのに、それを言葉にする勇気がなかった。
「だから?」翔太は少し首をかしげ、心配そうに涼介を見る。
それでも、二人の距離は縮まっていく。やがて、翔太が軽く涼介の肩に手を置いた。その瞬間、涼介は心臓が一瞬止まったように感じた。
「このまま、二人でいよう」と翔太が言う。涼介はその言葉に頷きながら、心の中が温かな気持ちで満たされていくのを感じた。
不意に翔太の手が涼介の手に重なる。そんな何気ない仕草に、二人の関係が新たな段階に進む予感がした。
夜は更け、二人の間には静かな幸福感が広がる。彼らの秘密の同居生活は、新たな形へと変わろうとしていた。ほんの少しの勇気が、二人の距離を縮めていく。
「また、明日も同じように過ごそうな」と翔太が言う。
「はい、ぜひ」と涼介は心から応えた。彼の中には希望と期待が溢れている。まだ言葉にはできない気持ちが、確かに翔太との間に芽生えつつあった。
そのまま、涼介は静かに目を閉じる。二人の未来に何が待っているのかはわからない。けれど、今はそれを楽しみにし、心地よい余韻に浸っていた。