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秘密の同居生活は甘い夢

# 秘密の同居生活は甘い夢

春の光が差し込む窓際は、心地よい温かさに満ちていた。薄いカーテン越しに柔らかな日差しが注ぎ、日々の忙しさを忘れさせてくれる。そんな穏やかな場所で、涼介は目の前に立つ隼人に心を奪われていた。

「先輩、もう少しこっちですよ。」

涼介の言葉に、隼人は微笑みを浮かべながら少し位置をずらす。二人は社内での仕事を終え、隼人の頼みで同居を始めてからちょうど一ヶ月が経った。初めは緊張していた二人も、今ではこの生活が当たり前のように感じられるようになっていた。

「今日の夕食、何かリクエストある?」

隼人の問いに、涼介は少し考え込む。先輩とこんな風に料理をする日が来るなんて、思いもしなかった。彼の笑顔は、まるで涼介の心を優しく溶かすようだった。

「特にないですけど、先輩の作る料理は何でも美味しいから、お任せします。」

小さく口元を緩めつつ、涼介は心の中で自分の気持ちを隠し続ける苦しさを思い出す。両親の知り合いで、幼い頃からの友人でもある隼人。いつも優しく頼りがいのある彼に、自分の想いを打ち明けることはできない。そう思うと、涼介はふわりとした感情に包まれていた。

「じゃあ、今日はハンバーグを作るね。涼介が好きだって言ってたし。」

「すごい、楽しみです!」

自然に笑顔がこぼれる。隼人の手際の良い動きに見惚れながら、涼介は洗い物を手伝う。お互いの距離感が近く感じる瞬間、涼介は心臓が高鳴るのを感じた。隼人はそのことに気づかず、料理に専念している。

「涼介、これも手伝ってくれる?」

隼人が材料を渡しながら声をかけてきた。その時、何気ない距離感がいつの間にか特別なものに変わってしまった気がした。

「は、はい!自分にできることは何でもやります!」

思わず声が高くなり、涼介は一瞬驚いたように声を潜める。そんな彼を見て、隼人はクスッと笑い、頬がほんのり赤らんだ。その瞬間、涼介は言葉にならない甘い感情が心に広がるのを感じた。まるで恋心が少しずつ実を結ぼうとしているようで、じれったい。

「涼介、なにか悩んでる?」

隼人がじっと涼介の表情を見つめながら尋ねてきた。彼の目はいつもと同じ優しさに満ち、涼介の心の奥を見透かしているようだった。ドキリとする瞬間が、涼介に言葉を探させる。

「別に大丈夫です。なんでもないです。」

無理に笑顔を作ろうとしたが、その気持ちが伝わってしまうのではないかと不安がよぎる。

「そう?ならいいんだけど。」

隼人は再び料理に集中し始めたが、涼介はどうしてもその背中に視線を注ぎ続けてしまう。あの日からこの同居が始まったことで、お互いの気持ちがこれまで以上に近づいた。しかし、心の中の秘密は消えないままだった。

「最近、涼介がどんどん大人になってる気がする。」

隼人がふとした瞬間に口にする。その言葉に涼介はドキッとする。隼人が自分をどのように見ているのか、どんな風に感じているのか、強く興味を抱くようになっていた。

「僕、大人になってますかね…?」

「もちろん。少しずつだけど、前より頼りがいが増しているよ。」

そう言われると、涼介の心は甘い幸福感に包まれる。普段の仕事では照れくさい一言も、ここでは自然に受け止められる。

「先輩のおかげです。僕、先輩と一緒にいる時間が好きですから。」

素直な気持ちが溢れ出してしまった。涼介は一瞬、後悔したが、隼人が振り向いてその笑顔を向けてきた瞬間、その思いは全てを肯定してくれた。

「嬉しいな。じゃあ、もっと一緒にいたいね。」

その言葉には、どこか特別な響きがあった。それは涼介の心の奥に潜む感情を、まるで優しく引き寄せるような力があった。

料理ができると、二人は並んでテーブルに向かった。料理の香ばしい匂いが空気を満たし、食事を楽しみながら互いの目を見つめることにドキドキが混じる。

「本当に美味しい、先輩は最高です。」

涼介は心の中で何かが膨れ上がっていくのを感じた。隼人が嬉しそうに笑った瞬間、彼の笑顔はまるで自分だけのもののように感じ、胸が高鳴る。

「涼介も、優しいね。そうやって褒めてもらえると、もっと頑張ろうって思える。」

二人の目線が交差するたびに、甘酸っぱい感情が心の中で弾ける。涼介はその瞬間、隼人といるこの生活が永遠に続けばいいのにと願った。

夜が更け、二人は居間で並んでソファに座り、何気ない話を続けていた。心地よい空間の中で過ごす時間は、いつの間にか特別なものとなっていた。お互いの未練を感じながらも、その気持ちを抑えて。

「この生活、ずっと続けたくない?」隼人が突然言った。

「え、どういう意味ですか?」

思わず涼介は驚いた。隼人は少し考えるように視線を下に向けた。

「たとえば、ここでずっと一緒に暮らすとか。」

その言葉に、涼介の心がぎゅっと掴まれる。衝撃と期待の狭間で、心臓が早鳴り始めた。

「私たちが、同居を…?」

「もちろん、そんなふうに続けたかったらね。でも、いつかは普通の人に戻るのも悪くないかな。」

隼人の言葉には、一瞬の静寂が生まれた。涼介は頷こうとしたが、思わずその先に考えが巡る。隼人が望んでいる未来が本当に一緒のものであるなら、自分の思いを伝えなければならない。

「でも、先輩と一緒にいる時間が好きだから、離れたくないです。」

その言葉が放たれると、隼人は真剣な眼差しで涼介を見つめ返した。そして、少し頬を赤らめながら答える。

「僕も、涼介と一緒にいたいな。」

彼の言葉に、涼介の心は満たされる。余韻の中で甘い夢を描きながら、二人の視線が重なり、互いの距離がさらに縮まる気がした。

未来に何が待っているのかわからない。その一歩を踏み出す勇気が湧く瞬間、彼らはほんの少しだけ、お互いを感じ合い、甘い余韻に包まれていた。