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ライバルの同盟

# ライバルの同盟

「なんでまた、このプロジェクトで組まなきゃいけないんだ?」田中は呆れた様子で机を叩いた。

「お前が一番適任だからだよ、田中。お互いの良さを引き出すために、部長がそう決めたんだ。」隣の席から川崎が冷静に返す。その目には、わずかに挑戦的な光が宿っていた。

田中は厳しい表情を崩さず、口を尖らせた。「見損なっていたな、川崎。お前がそんなことを言うなんて。」

「お前も俺をバカにしてるだろ。それも仕方ない、だってお互いライバルだからな。」川崎は無邪気に笑い、田中の心をじわじわと揺さぶる。

二人は同じ部署に勤めているものの、競争心が強く、常に張り合っていた。川崎の冗談に、田中は不快感を隠せず、再びため息をついた。

「俺はやる気がないわけじゃない。ただ、お前がいると集中できないんだ。」田中がそう言うと、川崎はその言葉を軽やかに受け流した。

「お前が俺に勝つためには、俺の力が必要だってことを理解しろよ。さあ、始めようぜ。」その言葉に、田中は一瞬、何かが動くのを感じた。

翌週、彼らは初めての打ち合わせに臨んだ。川崎の資料は整然としており、視覚的にもわかりやすい。田中の資料も負けてはいなかったが、今までの意地を捨てて協力する姿勢が求められていた。

「なるほど、ここはこうするのが良いかもしれないな。」田中は思わず意見を出すと、川崎は驚きの表情を浮かべた。

「俺もそう思っていたが、一言も言わなかった。さすが、田中。」川崎が頷くと、田中は少し恥ずかしい気持ちになった。

プロジェクトが進むにつれて、彼らの関係も徐々に変化していった。討論は激しさを増し、時には意見がぶつかり合うこともあった。しかし、その衝突の中で、互いの距離が縮まっていることに気づいたのだ。

「お前、意外と面白いな。」ある日、川崎がそう言った。

「それはお前が俺のことをもっと知るようになったってことだな。」田中が挑発的に微笑むと、川崎も嬉しそうに笑った。

しかし、楽しい時間はいつまでも続かない。プロジェクトが佳境に入ると、二人の緊張は増していった。意見を出し合うことができた二人だが、信頼関係が築けているのかどうかは疑問だった。

「俺たち、本当にこれを成功させられるのか?」田中は思い悩むように呟いた。

「大丈夫だ、田中。お前がいるからこそ、俺は前に進める。」川崎の言葉が静かな夜に響いた。田中は、その言葉に一瞬不安が和らいだ。

最終的なプレゼンの日がやってきた。二人は互いを見つめ合い、これまでの努力を信じて最良の結果を目指すことにした。プレゼンが終わった瞬間、緊張が解け、互いに安堵の表情を浮かべた。

「いや、悪くなかったな。お前とやったから、楽しかった。」川崎は笑いながら言い、田中の心を温かく包んだ。

「お前も、少しは私を見直したか?」田中は挑戦的な笑顔を浮かべた。

そして仕事を終えて帰ろうとする二人。夕暮れの光が徐々に消え、空にはほのかな明かりが残る。静寂の中、心の奥で芽生えた感情がお互いに響き合うのを感じた。

「また、次のプロジェクトで組むか?」川崎がきょとんとした顔で提案した。

「その時は、もう少し仲良くできるように努力するよ。」田中は小さく微笑み、二人の間に生まれた新たな絆を静かに受け入れた。

余韻の残る夕暮れの中、二人は新たな一歩を踏み出した。