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秘密の同居生活

# 秘密の同居生活

ある晴れた昼下がり、柔らかな陽射しがオフィスに差し込み、穏やかな雰囲気が漂っていた。広々としたデスクの前で、先輩の三島はパソコンに向かい、忙しそうにキーボードを叩いている。その横に立つ後輩の翔太は、微笑みながら彼を見守っていた。

「三島先輩、まだ終わらないんですか?」

「もう少しだから、待っててくれないか?」

お世辞にも早く終わりそうにない仕事に、翔太は小さく溜息をつく。実は、最近、三島と翔太は密かに同居を始めていた。最初は「仕事の効率を上げるため」という名目だったが、実際には二人の距離を縮めるための理由があったのだ。

翔太は内心、その秘密の同居に興奮とドキドキを感じていた。先輩の部屋で眠るという状況が、まるで夢のように思えたからだ。しかし、現実が続く中で、翔太の気持ちはさらに深まっていく。三島が優しく、自分に特別な感情を抱いているのではないかという期待感が、彼の心を揺らしていた。

「だって、先輩が忙しすぎて、遊びに行けないじゃないですか」

「遊び?そんな暇はないよ、仕事だよ、仕事」

そう言いながらも、三島は微かに笑い、翔太の方を見た。その瞬間、翔太の心臓がドキッと跳ねる。三島の笑顔は、彼にとって特別なものであった。

「パソコンが壊れたら、遊びに行けるかもしれないよ」

「それは困る。お前に何かあったらどうするつもりだ?」

三島は真剣な顔で答えたが、翔太はその言葉に冗談めいた雰囲気を感じ、思わず笑顔が溢れた。一瞬で険しい雰囲気が和らぎ、翔太は心の中で思っていることを三島が察しているような気がした。

「ねぇ、三島先輩。最近、なんか距離が縮まった気がしませんか?」

「距離?衣装のサイズでも変わったか?」

「そうじゃなくて!」

翔太は慌てて言い返す。三島が冗談を言うと、無邪気な子供のように見える。翔太の心の奥底に、少しの勇気が芽生えた気がした。

「私たち、もっと仲良くなったと思うんです。こうして同居してるし」

「そうかもな。でも、仲良くなるって、どういうことだ?」

三島は真面目に言ったが、その瞳には微かな遊び心が見え隠れしている。翔太は少し戸惑いながらも、勇気を出して言葉を続けた。

「例えば、もっといろんなことを知りたいなって。三島先輩の趣味とか、好きな食べ物とか。そういうの、もっと話せたら楽しいと思うんです」

「なるほど、じゃあ、今度は俺が夕飯作るから、その時に教えてくれ」

翔太は驚いた。三島が料理を?そんな意外な発言に、興奮が高まる。普段の仕事では見せない三島の一面を知れるかもしれない。

「いいんですか?先輩が料理を?」

「お前、何か文句でもあるのか?」

「文句じゃなくて、楽しみです!」

翔太は心が高鳴るのを感じながら、心の中でそんなやり取りを繰り広げた。

数日後、待ちに待った料理の日がやってきた。翔太は三島の料理に期待を膨らませ、その日は早く家に帰ることにした。ドキドキしながら玄関の扉を開けると、ふんわりと料理の香りが漂ってきた。

「お帰り、翔太。もうすぐ出来るから、手伝ってくれ」

三島はエプロンをつけ、笑顔で振り返った。その姿に翔太の心は一瞬でときめく。三島の料理は見た目にも美しく、香ばしい匂いが食欲をそそった。

「すごい、何を作ったんですか?」

「簡単なパスタだ。お前が好きだって聞いたから」

翔太はその言葉に幸福感を感じた。この小さな気遣いが彼の胸を温かく満たす。

「いただきます!」

二人で並んで食卓に座り、楽しい食事の時間が始まった。お互いの趣味や好きなことについて話し合ううちに、会話が自然と心地よいものになっていく。三島の料理には彼の思いやりが詰まっていて、翔太はその味に感動した。

「これ、本当に美味しいです。先輩、料理の才能があるじゃないですか」

「ただの普通のパスタだよ」

「いや、普通じゃないですよ。先輩が作ったから特別です」

そんな言葉が自然に出ると、三島は少し照れたように目を逸らし、「そうかもな」と小さく笑った。翔太はその瞬間、自分の心に芽生えた感情が確かなものになっていくのを感じた。

食事が終わった後、二人はソファに並んで座り、テレビをつけ、何気ない会話を交わした。そして、徐々に言葉が少なくなり、静かな時間が流れた。

「翔太、お前って本当に不思議だな」

突然の三島の言葉に、翔太は驚いた。どんな意味だろうと考える。

「先輩が、ですか?」

「俺は、こういう生活を想像していなかった。なのに、お前といると自然体でいられる」

その言葉に、翔太の心がどきりと跳ねる。自分の存在が三島にとって特別であることが感じられ、とても嬉しかった。

「私も、先輩といると楽しいです。もっと一緒にいたいなと思います」

「そうか。じゃあ、これからもよろしくな」

互いの視線が重なり、少し照れくさい気持ちが心に広がる。この瞬間、二人の関係が深まる予感がした。

日々の中で、二人は少しずつ心を通わせていった。しかし、外の世界にはさまざまな事情がある。この関係がいつまでも続くのか、翔太は心のどこかで不安を感じていた。

その日の夜、ベッドに入った翔太は、明日の仕事が心配になった。そんな時、三島は隣の部屋から静かな声で呼んだ。

「翔太、寝る前に話がある」

ドキッとした翔太は急いで三島の部屋に向かった。暗い部屋の中で、三島は彼の目を見つめていた。

「お前、少しずつ俺のことを好きになってると思うか?」

照れくさくて言葉が出ない。翔太は真っ赤になり、口ごもりながら頷いた。

「そうなんだ…俺もお前のことが好きだ。もちろん、恋愛としての好きだよ」

三島の言葉に、翔太の心は高鳴る。まるで甘い春の風が吹くように心を撫でた。心の中の不安が一瞬消え去り、幸せな気持ちで満たされた。

「じゃ、これからも一緒にいようか?」

「…はい、もちろんです!」

二人は静かに、新たな関係を築き始めた。そして、その思いを抱えながら、日々の日常が続いていく。

こうして翔太の心の中には、三島が特別な存在として確かな居場所を持つことになった。彼らの秘密の同居生活は、まだ始まったばかりだった。どんな未来が待っているのか、二人には分からなかったが、その瞬間、確かな絆が生まれていた。

部屋の外は月明かりが静かに照らし、二人はお互いの心に寄り添いながら、新しい日々を迎えていく。そんな予感が、彼らの心を微笑ませていた。