小説

幼馴染の思い出

# 幼馴染の思い出

春の訪れと共に、新しい学期が始まろうとしていた。桜の花びらが舞い散る校庭で、少し緊張気味の転校生・春田(はるた)は、自己紹介の時間が迫っているのを感じていた。

「えっと…あの、春田です。転校生…です。」小さな声でそう言いながら、彼は視線を床に落とした。心臓がドキドキしているのを感じつつ、周りのクラスメートの視線を浴びていた。

その時、隣から声が聞こえた。「なにその自己紹介、ほんとに聞こえなかったよ!」明るい声の主は、幼馴染の健(けん)だった。彼のそばにいるだけで、春田はなんだか安心する反面、彼に抱く恋心を自覚し、顔が赤く染まった。

「うるさい!」と言い返しながらも、健の声に救われた気がした。彼は春田にとって、特別な存在なのだから。

健はいつも明るく、元気で、春田の悩みをすぐに理解してくれる存在だった。転校生となった春田にとって、健はまさにお守りのような存在だった。

授業が終わり、廊下を歩く二人。春田は勇気を振り絞り、健に声をかけた。「あの、健…中学校の時、私たちって結構一緒にいたよね?」懐かしい思い出が蘇る。

「もちろん!昼休みはいつも一緒に過ごして、放課後も遊んでたもんね。」健はニコニコと笑顔を向けてくる。その笑顔は、春田に温かい日差しのような安心感を与えた。

「でも、最近はあまり話す機会がなくて…」春田の声には少し不安が滲んでいた。心の奥には、健にもっと「特別な存在」として認められたいという思いが渦巻いていた。

「ああ、そっか!俺も少し寂しかったよ。やっぱり、春田がいないとつまらない!」健は大きな声で笑いながら、春田の肩をポンと叩く。その仕草に、春田の心は一瞬ドキリとした。

「ほんとに?私、意外と重要な存在なの?」春田は心の中で自問した。

「いや、重要っていうか…重要かな?」健は少し戸惑いながらも続けた。「幼馴染だから、お前のことは特別だよ!」

春田は健の真剣な瞳を見つめ返す。この瞬間、彼の心は決まった。彼はずっと、健に特別な想いを抱いていたことを自覚した。

「私も、健が特別だよ。」春田の言葉は自然に口をついて出てきた。その一言が、二人の距離を一気に縮めた。

「じゃあ、今度また遊びに行こうよ!」健が提案する。「あの日みたいに、映画見たり、お菓子作ったりさ!」

「いいね!それ、すごく楽しそう!」春田は心からの笑顔を返し、希望に満ちた未来を感じた。

その後、休日に出かける約束をし、二人は別れた。しかし、春田は心の中で、またこの瞬間に戻りたいと願っていた。それは、彼らの友情が少しずつ恋へと変わる兆しだった。

数日後、約束の日。春田はドキドキしながら健との再会を待っていた。自分の特別な気持ちを伝える勇気があるのだろうか。そんな思いを胸に、健が姿を現した。

「春田!」健が元気よく呼ぶ。「今日は何を作る?」

「うーん、クッキーとか、どう?」春田の目が輝く。楽しみな気持ちでいっぱいだった。

「オッケー!でも、俺の分もちゃんと作ってくれよ!」健は笑いながら厨房に立ち、春田の隣で一緒に材料を用意し始めた。

「クッキーの型、可愛いのあるかな?」と言いながら、二人の距離はますます近くなった。

その時、春田が思わず健の手をつかむ。「ねえ、私たちって本当に一緒にずっといていいの?」

急に真剣な表情になった春田に、健は一瞬戸惑った。「もちろんだよ!お前がいるから、俺も頑張れるし、楽しい!」

その一言に、春田は心の奥から温かいものが溢れた。待ち望んでいた答えだった。

「じゃあ、改めて…私、健のことが好き。」少しドキドキしながら、勇気を振り絞って正直な想いを打ち明けた。

健は驚いた表情を浮かべたが、その目には優しい光が宿っていた。「俺も、お前のことが好きだよ!」と、まっすぐに目を見て答える。

その瞬間、春田の心は急激に高鳴った。友情から恋へと変わる出会いの瞬間を、二人は確かに感じ取った。

そして、その日のクッキー作りは、いつも以上に楽しいものになった。笑い声とともに、美味しい香りが部屋に広がり、彼らの心はますます通い合った。

夕方、完成したクッキーを手に、それぞれの思いを寄せながら、「また遊ぼう!」と約束して別れた。

夕暮れ時、春田は心の中に温かな気持ちを抱え、素直に笑った。それは特別な人と過ごす喜びだった。

この先、二人の関係がどのように変化していくのか、春田は期待を胸に秘めながら歩き出した。