# 秘密のシェアハウス
「今日も仕事、頑張ってますか?」佐藤は明るい声で、先輩の松井に微笑みかけた。松井はデスクに向かいながら、ふとその視線を感じて振り向く。
「お前、朝から元気だな。どこにそんなエネルギーがあるんだ?」松井の口元には、わずかな笑みが浮かんでいた。佐藤はその様子にドキリとし、自分の頬が熱くなるのを感じた。
「そ、そういう松井先輩も、いつも通りじゃないですか!」佐藤は何とか言い返しながら、自分の気持ちを隠すのに必死だった。松井は高身長でスタイルも良く、クールな見た目からは想像できない優しさを持ち合わせており、後輩たちからも人気を集めている。
そんな先輩との同居生活が始まったのは、ちょうど一か月前のことだった。家賃を少しでも安くしようと、急遽提案したのがきっかけだ。佐藤は期待と不安を胸に抱えながら、新しい生活をスタートさせた。
午後の仕事が終わると、二人は帰宅する。その道すがら、何気ない会話が交わされる。
「松井先輩、明日の夕飯、カレーにしましょうか?」佐藤が提案すると、松井は驚いたように目を見開いた。
「お前が料理するのか?マジか。」彼の返事には少し冗談が交じっている。佐藤は少しムッとした。
「失礼ですね!最近、料理も頑張っているんですから。」自分の腕を見せるような仕草をし、松井の反応を期待した。
「そうか、じゃあ楽しみにしているよ。」松井は本気で信じたような表情を浮かべ、さらに笑顔になった。佐藤の心は高鳴り、気恥ずかしさがこみ上げてきた。
家に着くと、カレーの材料を揃え始める。松井は横でぼんやりとした視線でテレビを見ていた。「ほら、手伝ってくださいよ。」佐藤は少し声を荒げる。
「お前が主役だから、俺は脇役に徹するよ。」松井はうんざりしたように言ったが、その目には優しさが宿っていた。佐藤は、その内心を見透かされているようで、嬉しくなった。
カレーが煮えてくる匂いが部屋に広がる。「なあ、佐藤。お前は料理だけじゃなくて、もっといろんなことに挑戦してみたらどうだ?」松井は真剣な眼差しで言った。
「何がいいんですか?」佐藤は少し不安になった。何を言われるのか分からなかったからだ。
「例えば…デートとか。」松井の一言に、佐藤は心臓が跳ねるのを感じた。「デートですか?」と、驚きの声が漏れた。松井はちょっとした褒め言葉を言うように首をすくめた。
「まあ、いつでも誘えるってことさ。」彼の投げやりな言葉に、佐藤はドキリとした。心の中で、自分の気持ちがどう変わっていくのかを再認識する瞬間だった。
時が経つにつれ、二人の距離は少しずつ縮まっていった。松井が何気なく優しさを見せるたびに、佐藤はますます彼に惹かれていった。一緒にいることが当たり前になり、日常が特別な時間へと変わっていく。
「ねぇ、明日の休日は何する?」松井は同居初の休日を控え、興味津々に尋ねてきた。佐藤は思わずドキッとした。
「えっと…何でもいいですよ、松井先輩が行きたいところに。」無邪気に返した。
「そっか、じゃあ…海に行こうか。」松井の意外な提案に、佐藤は目を大きく見開いた。
「え、海ですか!?泳げる自信ないですけど…」
「大丈夫。俺が助けてやるから。」松井の言葉は、いつも通りの軽やかさの中に特別な重みを含んでいた。佐藤はその言葉を心に刻み、不安と期待が交錯した。
当日、青い海と澄んだ空の下で、二人は笑い合いながら遊んだ。松井の笑顔は、佐藤にとって特別な景色だった。会話のリズムが心地よく響き、何気ない瞬間が幸せに満ちていた。
「今日は楽しかったな。」帰り道、松井が言った。その顔には笑みが浮かんでいた。佐藤はその瞬間、彼への思いがどれほど強くなったのかを実感する。
「私も、松井先輩といるのが楽しいです!」思わず口に出してしまったその言葉は、彼の心の中に余韻として残った。
帰宅後、少し照れくささを感じながら、佐藤は自分の気持ちを整理しようとした。松井といることで、自分自身が少しずつ変わりつつあるのを感じていた。
「いつか、もっと素直になりたい。」心の中で小さくつぶやく。余韻を残しつつ、二人の関係はゆっくりと新たな段階へと進んでいくのだった。