小説

学園の甘い秘密

# 学園の甘い秘密

「ねえ、鈴木さん、クッキー食べる?」
後輩の太一が、教室の片隅で先輩の耕平に微笑みかけた。沸き立つ熱気の中、耕平は思わず顔をほころばせる。このお菓子の袋が、長い休み時間の退屈を打破してくれるに違いないと、直感したからだ。

「いいんですか?」
耕平は目を輝かせて尋ねた。太一は嬉しそうに頷く。
「もちろん!最近、手作りのクッキーを練習してるんです。」
その言葉に、耕平の目はさらに大きくなった。

「手作り!?すごい、どんな味なの?」
「うーん、ちょっと甘めかもしれませんけど…」
太一は恥ずかしそうに髪をかき上げる。クッキーを一口頬張った耕平は、その瞬間、目を細めた。

「おいしい!」
彼のストレートな感想に、太一の顔は照れくささで赤くなった。
「そんなに喜んでもらえると、作った甲斐があります。」
その微笑みは、男子校の日常に小さな花を咲かせるような、かすかな明るさを持っていた。

放課後、二人は同じ部活に所属していた。これから練習が始まるが、今日は特に太一が耕平を誘うことを決めていた。最近読んだ小説の影響で、「秘密の同居」というテーマが頭から離れなかったのだ。

「先輩、今日、うちに来てみませんか?」
太一の突然の提案に、耕平は驚いた表情を浮かべる。
「え?うちに?」
「うん、母が出かけているから、家が空いてるんです。」
太一は嬉しそうに勧めた。「少し話したいことがあるし。」

耕平の心には小さな期待が膨らんだ。彼にとって、同居というアイデアは、ただの友情以上の何かを考えさせるものだった。
「いいよ、行こう!」
彼はニヤリと笑い、太一にウインクを返した。

太一の家に到着した二人は、なんとなくカジュアルな雰囲気に包まれていた。居間に広がる香りは、さっきのクッキーを思い出させる甘いもので、ほのかに懐かしかった。
「ちょっと待って、飲み物用意するから。」
太一がキッチンに向かうと、耕平は周りを見回した。いつもとは違う景色が新鮮で、思わず笑みがこぼれる。

「はい、これ、オレンジジュース!」
戻ってきた太一が差し出したグラスに、耕平はすぐに口をつけた。
「おいしい、太一って料理上手なんだね。」
「いえいえ、ジュース作っただけですから。」
太一は恥ずかしそうに笑う。その仕草が耕平の心に小さな火を灯す。

「ねえ、太一。こういうの、いいよね。」
促されるように、耕平は口を開く。「友達としても、それ以上としても。」
太一は一瞬目を丸くし、「えっ?」と驚いた。

「何でもない、ただの独り言だよ。」
耕平はむっつり顔を作り、意識的に視線を外した。
太一はそんな耕平の様子に戸惑いながらも、次第に真剣さが増していくのを感じた。
「でも、先輩…私たち、ずっと一緒にいられたら、きっと楽しいと思う。」

太一の言葉に、耕平は心が躍った。彼は自分の感情が不安定であることを理解しつつ、太一の目を真剣に見つめ返した。
「本当に一緒にいたいと思ってる?」
その瞬間、二人の間に微妙な静けさが流れた。

「それは…」「あのね…」
言葉が交錯し、一瞬の緊張が二人を包む。しかし、太一が口を開く前に、耕平は続けた。
「私も、太一と一緒なら楽しいと思う。」

小さな結論に、太一は思わず笑顔を浮かべた。互いの想いを確認し合うことで、友情の枠が一歩進んだような感覚があった。
「じゃあ、これからももっと一緒に遊ぼうね。」
耕平は、素直な笑みを見せた。

その後、二人はリビングでほんのり甘い時間を過ごした。部屋に広がる静かな笑い声は、まるで二人の心を少しずつ近づけていくようだった。日が暮れ、淡い光が二人を包み込む中、太一が一言つぶやく。
「先輩、そういえば…」
「何?」
「もっとクッキー作れるように頑張るから、また食べてください。」

耕平はクスクス笑いながら、頷いた。
「もちろん、楽しみにしているよ。」

その時、耕平はふと思った。たまには日常の小さな秘密が、ふたりの距離を縮めることもあるのだと。これからの未来を描きながら、余韻のある甘さを感じつつ、二人はそれぞれの心に温かい思いを抱えて、静かな夜を迎えた。