小説

思い出の景色

# 思い出の景色

田舎の穏やかな春の日差しが西の空を柔らかく染める。桜の花びらが風に舞い、まるで二人の思い出を優しく包み込んでいるようだった。

「あれ、絵里じゃないか?」

久しぶりの声に振り向くと、そこには幼馴染の翔が立っていた。彼の顔は昔と変わらず爽やかで、どこか懐かしさを感じさせる。絵里は小さく驚きながらも、自然に笑顔がこぼれた。

「翔、久しぶり! 本当に久しぶりだね」

二人の距離が一瞬にして縮まる。日々の忙しさに流されてお互いに連絡を取らなかったが、この瞬間に全てが贖われた気がした。絵里は翔の優しさに包まれるような気分になった。

「こんなところで会うなんて、運命的だね」

翔の口元がふわりと緩む。彼の言葉は、絵里の心にじんわりと染み込んでくる。昔の思い出が浮かび上がる。二人で見た星空、手を繋いだ帰り道、そして何気ない笑い声。

「そうだね。ここの桜は、いつ見ても綺麗だな」

「うん、昔と変わらないね。二人でよく来たもんね」

絵里が言うと、翔は少し照れたように目をそらした。その仕草が、どこか幼かった頃の翔を思い出させる。そんな彼を見て、絵里の胸が高鳴った。

「お花見、またしない? 昔みたいに手作りのお弁当を持って」

絵里の提案に、翔の目が輝いた。「絶対やろう!」その返事は、まるで子供のようだ。再会の喜びが二人の間に流れ込む。

「そうだ、あの池も久しぶりに見に行こうよ」

絵里の言葉に翔は大きく頷く。二人は自然な流れで池へ向かうことにした。道すがら、昔の話をする。まるで時が戻ったかのような感覚だった。

「絵里、覚えてる? あの時、一緒に池に落ちて、びしょ濡れになったこと」

翔の表情には懐かしさと少しの恥じらいが混じっている。絵里も思わず笑ってしまった。

「うん、覚えてるよ。その時、私が翔を助けようとして、結局二人とも濡れたよね」

「そうそう、またやりたいね!」

二人が池の前に到着すると、静かな水面が桜の花びらを受け止めている。絵里はふと、翔の横顔を見つめた。彼の頬に当たる春の風が、どこか心地よい。

「今も昔も、変わらないね」

翔の声が絵里の心に優しく届く。絵里は思わず頷き、翔の言葉に応えた。「うん。変わらないのに、今はもっと特別な気がする」

その瞬間、翔の視線が絵里に向けられた。しばらく二人は見つめ合い、言葉がないまま心の距離が近づいていく。

「絵里、もう一回、やり直してみない?」

翔の言葉に、絵里の心臓が一瞬止まった。彼のまっすぐな目を見返す。「やり直す…って、どういうこと?」

「昔みたいに、もっと一緒にいたいってことだよ」

絵里は心の中で何かが弾けるのを感じた。翔の素直な気持ちが、彼自身を映し出している。彼が前に進もうとしていることが嬉しくてたまらなかった。

「私も、翔と一緒にいたい。でも、どうしてそんなことを言ってくれるの?」

翔は少し考え込むように眉をひそめ、そして柔らかく笑った。「だって、絵里といると安心するし、楽しいから。もっと一緒に、いろんな思い出を作りたいって思った」

絵里は思わず翔の手を取った。その温もりが、彼の真剣な気持ちを確かに伝えてくる。彼女の心が満たされる感覚が広がっていった。

「私も、えっと…翔と一緒がいい。友達以上になりたい」

翔の表情がパッと明るくなる。彼は少し照れながらも、嬉しさを隠せない様子で絵里の手をしっかりと握り返した。

「じゃあ、これからもずっと一緒にいよう」

二人の間には確かな絆が生まれたように感じられる。春の光が、それを祝福するかのように周りを照らしている。

その日、二人は再び思い出を紡ぎながら、ゆっくりと帰路に着いた。穏やかな田舎の風景が青春の甘さを思い起こさせる。彼らの心には新たな季節が訪れ、これからの未来に期待を抱かせた。

夕暮れ時、桜の木の下で並んで歩く二人の姿は、恋人のような親密さを漂わせていた。そして、彼らの心の中に、これからの思い出への期待が静かに広がっていった。

柔らかな風が吹くその瞬間、絵里は幸せを感じた。未来に何が待っているのか、二人は笑顔でそれを迎え入れる準備をしていた。