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恋するお隣さん

# 恋するお隣さん

「水野くん、今夜も一緒にご飯食べる?」

 先輩の田中は、後輩の水野をちらりと見上げながら声をかけた。いつもの明るい笑顔が、水野の心を掴むように感じられた。少し戸惑いながらも、その笑顔に引き寄せられる。

「そ、そうだね。今日は何を食べるの?」

 水野は田中の家に住み始めてから、少しずつ高まる気持ちに気づいていた。最初は戸惑いを覚えたが、今ではその距離感が心地よいと感じるようになっていた。

「特製カレーでも作ろうかと思って。水野くんのために、頑張るよ」

 田中は意気揚々とキッチンへ向かい、さっそくカレーの準備を始めた。その姿を見て、水野は思わず笑みがこぼれる。真剣に料理をする田中は、普段とは違う一面を見せていた。

「田中先輩、カレーをそんなに真剣に作るの、初めて見たかも」

「え、そう?普段はあまり料理しないってこと?」

「結構、適当そうなイメージだったから」

 水野は冗談混じりに言った。田中は一瞬手を止めたが、すぐに笑い返した。

「そんなことないよ!ちゃんと繊細な味付けを心がけてるんだから!」

「本気だ。先輩、料理教室でも通うんですか?」

 水野が笑いながら言うと、田中は照れくさそうに目を逸らした。頬が赤くなり、キッチンの中が一層温かい雰囲気に包まれていく。二人の空気は、まるでほのかなカレーの香りのように甘かった。

「いや、たまたま本を見て作ってみただけだよ。でも、なんか頑張ってみたくなっちゃった」

「先輩のために、一生懸命に作ったカレーを食べるの、すごく楽しみだな」

 水野は期待に目を輝かせて言った。すると田中は少し照れながらも、その様子にさらにやる気を引き出されたようだった。

「少し待っててね。水野くんが喜ぶ顔が見たいから」

 料理をしながら田中は何度も水野をちらちら見て、心が弾んでいくのを感じていた。実は水野も、その瞬間を楽しみにしていた。二人の間には、友達以上の何かが近づいていたのだ。

「そういえば、水野くんって、何か好みの食べ物とかあったりする?」

「俺?うーん、甘いもの?特にチョコレートが好きなんだ」

 水野は冗談めかして言ったが、真剣に田中を見つめる。田中はその視線にドキリとし、思わず頬が赤くなった。

「今度、チョコレートケーキも作らねば…!」

 田中が言うと、水野は少し驚いた表情をしながら、笑いを堪える。

「まさかお菓子作りまで…!先輩、女子力高いなぁ」

「だから、男の僕も頑張ってるんだぞ!」

 田中は自信満々に胸を張ったが、水野は少し肩をすくめて優しく微笑んだ。その笑顔は春の日差しのようで、田中の心にじんわりと温もりをもたらした。

「でも、逆に水野くんはどうなの?何か料理してくれるのかな?」

 田中が尋ねると、水野は少し考えるふりをした後、楽しげに答えた。

「うーん、焼きそばとか得意だよ。簡単なやつだけど、好きだし!」

「次は水野くんが料理してくれるの、楽しみにしてるから」

 田中は手を止めて水野を見た。彼の顔には、少し照れくさそうな笑顔が浮かんでいる。その瞬間、二人の間に新たな感情が芽生えるのを感じた。

 食事が終わり、二人はリビングに移動した。ソファに並んで座り、余韻に浸る。どちらも心の奥で感じるものがあった。

「でも、今日は本当にありがとう。こんなに楽しい時間は久しぶりだよ」

「田中先輩と一緒にいると、なんだか特別な気持ちになる」

 水野がぼんやりと言うと、田中は思わず目を丸くした。ドキリとした心臓の音が、ふたりの間に響く。

「そ、そうか。それならよかった」

 田中は笑顔を見せたが、急に真面目な表情になった。

「でも、逆に水野くんも特別だよ。いつも元気をもらえてるし」

 その言葉に水野は胸が高鳴る。先輩の気持ちを受け止めた瞬間、思わず自分の手を田中の手に重ねてみた。

「先輩…俺も、ずっと一緒にいたいと思ってる」

 その言葉には、強い決意が込められていた。田中は驚いて目を見開き、何かを言おうとした瞬間、水野の瞳に映るその真剣な表情に、胸が高鳴った。

「水野くん…」

 田中は言葉に詰まったが、心の中の感情が溢れ出しそうだった。二人の視線が交わり、言葉にしなくてもお互いの気持ちが繋がっているのを感じる。

 ただ、その瞬間、二人の間には静かな余韻が流れ、特別な時間が続いていた。

「これからも、一緒にいようね?」

「もちろん、約束だよ」

 田中が微笑むと、水野も心から嬉しそうに笑った。彼らの特別な関係は、これからも続いていくことを静かに確信していた。この日、二人の胸には甘くて温かな思い出が刻まれ、その余韻はいつまでも消えないでいる。