小説

秘密の同居、甘い時間

# 秘密の同居、甘い時間

春の訪れを告げる桜の花びらが舞う中、株式会社アオイは繁忙を極めていた。その中で一番の若手、後輩の凛(りん)は、密かに憧れを抱く先輩、悠(ゆう)との関係が進展することを願っていた。厳しい表情が似合う悠だが、その内側には柔らかな心を秘めていることを知っているのは、凛だけだった。

「おい、凛。明日から俺の部屋を間借りしてもいいか?」

予想もしなかった悠の提案に、凛の脳裏は真っ白になった。二人きりで暮らすなんて、あまりにも刺激的だ。心臓がドキドキと高鳴るのを感じながら、凛は少し考え込んだ。

「え、いいんですか? 先輩の部屋に…」

悠は頷きを返し、照れ隠しのように少し視線を逸らす。「ただ、猫がいるから、その点だけ気を付けてくれれば…」

凛の目が輝く。「猫、大好きです! 先輩の猫、名前はなんていうんですか?」無邪気に尋ねると、悠の口元がほんのり緩む。まるで、凛の笑顔が悠を解かしたかのようだった。

数日後、凛は悠の部屋に引っ越してきた。ダンボールに詰め込まれた私物を片付けていると、悠の愛猫、モモがふわふわとした毛を揺らしながら、凛の足元に寄ってくる。

「モモ、よろしくね」と凛が優しく手を伸ばすと、モモはすぐに膝の上に乗り、甘えるように鳴いた。

「凛、モモに懐かれたな。お前って、すぐ動物に好かれるよな」と悠が少し羨ましげに言う。凛は照れくささに頬を赤らめながら「先輩、そんなことないですよ」と否定したが、内心は嬉しさでいっぱいだった。

同居が始まって一週間。二人の距離は少しずつ縮まっていた。仕事が終わると、悠が晩御飯を作って待っていてくれる日もあれば、凛が手料理を振る舞う日もあった。お互いに自然と笑い合い、会話が弾む時間は、凛にとって特別なものになっていた。

「凛、これ、もう少し味付けした方がいいかもな」と悠が味見をしながら言う。凛はその背中を見て、自然と微笑みが溢れる。

「そうですか? 先輩が言うなら、調整します!」

こうしたやり取りが日常になると、凛は悠への想いがより一層強くなっていくのを感じた。「これって、恋なんだ」と思うと、胸がきゅんとした。

ある晩、久しぶりに二人だけの時間ができた。悠が真剣な眼差しで凛を見つめる。「お前、俺と同居してどう思ってる?」

凛は心臓が跳ね上がる。「先輩と一緒にいるのが、とても楽しいです」と素直に答えた。

悠は少し照れくさそうに微笑む。「俺もだよ。凛といる時は、心が和む。」

その言葉に凛の心が温かくなり、思わず「先輩がそう言ってくれるなら、もっと頑張ります!」と力強く言った。お互いの目が合い、静かな空気が流れた。

その瞬間、凛は思わず手を伸ばして悠の顔を包み込んだ。彼の頬は温かく、優しい表情がとても心地よい。悠も驚いた様子で目を大きく見開いた。

「え、凛…?」

「先輩にもっと甘えたいな」と凛が囁くように言うと、悠は少し首を傾げて微笑んだ。そして、その瞬間が二人の気持ちを一層強く結びつけるように感じられた。

「じゃあ、もっと甘えろよ」と悠は柔らかい声で答え、凛は思わず頬を赤らめた。

月日が流れる中で、二人の関係はより深く、恋人同士としての親密さを増していく。どんな時でも優しさを忘れず、互いを支え合う存在として、彼らは少しずつ未来を見据えるようになっていた。

「これからも、ずっと一緒にいてくれますか、先輩?」凛が不安な気持ちを口にすると、悠は優しく微笑んだ。「もちろんだ。俺も、凛と一緒がいいから。」

二人の心は、今まで以上に強く繋がり、春の風が吹き抜ける頃、新たな始まりを迎える予感がした。モモがすり寄りながら、二人の愛を見守っているかのようだった。

こうして、彼らの物語は静かに新たな章を迎えた。